心に森を築く一冊の本

摘要

最近は、読書を楽しむ時間も限られているだけに、余り悩まずに1冊の本を推薦できる。「日本汽水紀行-森は海の恋人の世界を尋ねて」（文藝春秋社，2003）である。第52回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した漁師の生命力とロマンに満ちた名著である。日本は世界的に希に見る豊かな自然に恵まれ，地域の自然に融け込んだ多様な文化を発達させてきた。ところが20世紀後半の科学技術の急速な進展は、ひとり人類のみが自然を支配できるかのごとく，目の前の生活の利便性と経済効率を優先させてしまった。結果は、修復不可能なほどに自然にダメージを与えることとなった。