鉄道電化の物語(9):架空単線式電気鉄道の進展

摘要

1895年(明治28)2月京都電気鉄道が営業運転を開始すると、東京市や大都市をはじめ各地で電気鉄道敷設の機運が高まり、架空単線式による電気鉄道敷設の出願が続出した。しかし、電蝕への危惧から都市部における架線単線式の採用は問題となっていた。すなわち、架空単線式では帰線としてレールを使用するが、レールから大地に漏洩した電流が水道鉄管など地下埋設の金属体に流れ込み、電気的な腐蝕(=電蝕)で被害をうけることを恐れ、軌道条例による電気鉄道を所管する内務省は水道管保護の立場から、架空複線式を採用すべきことを主張していた。それに対し、電気事業を取り締まる立場の逓信省は架空単線式を主張し、両者の主張は対立していた。今回はそうした議論が続いている中、架空単線式が特許された三つの電気鉄道について述べることとする。