統計学的手法を用いた中部山岳域における木造住宅の炭素固定効果の推定

摘要

国産材の利用率が6割まで増加した場合には、現状のまま推移した場合と比較して木造住宅に固定される炭素ストック量の減少が小さくなる推計結果を得た。これにより、HWPの算出対象となる国産認証材の利用を増やすことでHWPの炭素固定に繋がる可能性が示された。また、本論文での推計結果から2つの問題点が明らかになった。1つ目は、国産材利用率を増加させた場合でもHWP炭素ストックの增加を維持できなかったことである。2つめは、住宅着工数が減少傾向に有り、住宅の健在期間が一定という状況では、いずれ炭素固定量が放出量を下回り炭素固定効果が頭打ちになることが見て取れることである。この問題に対処する方針として住宅の長寿命化が考えられる。また、住宅数の増加によらない認証材利用量を増加させる手段として、既存住宅のリフォーム•リノベーションによる国産認証材の利用拡大に関しても今後の検討を進めていきたい。これらの要素について本論文では考慮することができなかったが今後は住宅の利用期間や改修方法についても考慮して研究を進めていく必要がある。加えて、国産材の中でもHWP算定対象となるFSC認証材等の適切な森林経営により製造された材について、その利用状況を考慮した推計も進めていく必要がある。着工数推計にあたり本論文では入手が容易な統計情報である、移動人口とGDP成長率を用いた推計を行った。今後は住宅ストック要因などを説明変数として考慮することでより当てはまりの良い推計を検討していく。%The purpose of this study is to clarify that the carbon dioxide fixed to wooden houses. Along with the revision of the CO2 emissions calculation method, carbon storage effect of the Harvested wooden product (HWP) came to be considered. The wooden houses account for a big ratio in HWP. We estimated the changes for the numbers of wooden houses in The Japanese Alps Area that consist of Gifu and Nagano. As a result, it was estimated that the amount of wooden houses in The Japanese Alps Area continued decreasing for the next 30 years. And also the carbon fixed to wooden houses is decreasing. Reduction of carbon storage effect can be suppressed by raising domestic lumber utilization ratio. Therefore we estimated the carbon storage effect of wooden house in the case of domestic lumber utilization increased. When domestic lumber utilization increased, the quantity of carbon storage in Gifu prefecture and Nagano prefecture is increased.