木造住宅の屋根に堆積した火山灰の滑動に関する一考察

摘要

A model testing for measuring a drop amount of the volcanic ash from a pitched roof was carried out. This testing indicates that a sliding of volcanic ash on a pitched roof can occur in a huge eruption and an occurrence of the sliding depends on surface roughness of roof material and a shape of surface of the roof. An angle of a slope of the volcanic ash depositing on the pitched roof whicn is an angle of the slope when the sliding is over can be main factor to understand of the sliding.%木造住宅の屋根に堆積した火山灰の滑動に関する基本的な性質を調べるため、屋根にセメント瓦とガルバリウム鋼板を葺いた実大の1/5サイズの屋根模型に桜島から噴出した火山灰と新燃岳から噴出した火山灰を堆積させ、目視による滑動の観察と火山灰落下量と屋根勾配の関係を調べた。また、屋根に堆積させた火山灰の断面形状を台形で近似したモデルを作成し、このときの斜面角を分析して火山灰の滑動の発生について考察した。これらから以下のことが分かった。1) 火山灰の滑動に伴う火山灰の移動現象の形態には、斜面表面の粒状流、斜面の滑り、火山灰の流下が見られる。斜面の崩壊時には火山灰の底面と屋根表面間での滑りは確認できない。2) 滑動は連続的に発生せず、火山灰落下後に平衡状態が存在する。火山灰が落下後に平衡状態になったときの堆積形状は概ね平らな斜面を維持し、斜面先が軒先位置に一致する。また斜面後方の平らな部分は斜面崩壊時も形状を変えず斜面の崩壊に影響を与えない。3) 屋根から落下する火山灰量が同累積落下率に達する時の屋根勾配はガルバリウム鋼板を一文字葺で葺いた屋根が最も小さく、凹凸も継ぎ目もない一枚のガルバリウム鋼板を葺いた屋根の勾配が最も大きい。セメント瓦葺と雪止めを取り付けたカルバリウム鋼板葺との間には顕著な違いは見られない。また、火山灰の粒径が異なると落下性状も異なり、桜島の火山灰と新燃岳の火山灰では明瞭な違いが見られた。4) 木造住宅の屋根に降下する乾燥した火山灰は滑動する可能性が高い。大規模噴火を想定した木造住宅の安全性を検討するうえで滑動の影響は無視できない。5)平衡状態の火山灰の斜面角は勾配の增加に伴い低下し、その大きさは火山灰のせん断強度に依存する。平衡状態の斜面角の特性は火山灰の滑動を考察する上で重要であり、この特性に屋根と火山灰の性状が与える影響を明らかにする必要がある。特に火山灰粒子間のかみ合いや摩擦が斜面角の低下に及ぼす影響と屋根形状が軒先部の火山灰の落下性状に及ぼす影響について詳細な検討を行うことが今後の課題である。本研究は乾燥した火山灰を対象としているが、実際の降灰時には降雨等のため火山灰が屋根面に固着した状態になってしまうことも少なくないと思われる。したがって、本研究の結果から火山灰が湿潤状態にあるときの木造住宅に作用する火山灰の重量を推定する場合には、危険側の評価になってしまうので注意が必要である。今後は湿潤状態の火山灰の滑動性状について本実験と同様の検討を行う予定である。