人体の地震応答解析モデルに基づく被震下人間負傷評価法の構築

摘要

本稿では，人体の地震応答解析モデルを用いて地震時の人間の負傷を定量的に評価し，地震時負傷可能性評価マップを提案した.さらに，人間の負傷に着目した耐震設計を行うために，負傷可能性評価マップの耐震設計への展開を示した.本研究で得られた知見を以下に示す.1)人体の地震応答解析モデルに正弦波を入カした場合の頭部負傷度およびCoP最大変位は，地震波や1質点系の応答を入カした際のそれらと0.3~2 [Hz]において良好に対応した.このことから，本研究では正弦波入カ時の負傷度およびCoP変位の評価曲線を人間の地震時負傷可能性評価マップとして提案した.2)2007年新潟県中越沖地震時の柏崎刈羽原子カ発電所で観測された強震記録と，同原子カ発電所運転員へのィンタビュー調査記録から評価される行動難度は，本研究で提案したCoP変位評価曲線と調和的であった.このことから，CoP変位評価曲線により，地震時の行動難度も評価できる可能性がある.3)本研究で提案した地震時負傷可能性評価マップと，既往の研究で提案されている家具の転倒率を併せて考慮し，人間の地震時の負傷可能性を評価することを提案し，試算した.試算結果では，振動数が1[Hz]以上の場合，PFAの増大に伴い本棚等の家具の転倒が比較的小さいPFAから生じ，その後PFAの増大に伴って人間の負傷可能性が高く，1[Hz]より低い範囲においては家具の転倒と人間が負傷する事象が同程度のPFAで発生する可能性が高い結果となった.