山形鋼筋違接合部に対して方杖を付加する耐震補強構法の性能確認

摘要

本研究では旧耐震建築物の筋違の接合部を対象に，無火気補強構法および耐力評価のための解析モデルを提案した.提案した構法の目的は，接合部で不足する荷重伝達量を方杖により付加される新たな荷重伝達経路により補い，筋違の接合部が筋違の降伏前に破断することを防止するためである.この構法の有効性，解析モデルの妥当性および適用範囲を検討するために，方杖の取付角度を試験因子とした載荷実験および方杖の取付位置，取付角度，補強剛性比ならびに筋違の取付角度を解析因子とした解析を行った.以下に得られた知見をまとめて記す.[1]載荷実験の結果，筋違の両側の柱•梁側に方杖を取り付けることで，地震時における柱•梁架構の層間変形を考慮しない条件下において，筋違の降伏前の接合部の破断防止効果が得られた.[2]載荷実験および解析の結果，提案する解析モデルにより，地震時における柱•梁架構の層間変形を考慮しない条件下において，筋違が弾性の範囲内の耐カ分担率を概ね再現できた.[3]解析の結果，地震時における柱•梁架構の層間変形を考慮した条件下において，柱•梁側の方杖の耐カ分担率を目標値に到達させるには，柱•梁側の方杖の取付角度，位置，補強剛性比および筋違の設置角度に適用範囲(限界)が存在することを確認した.