将来社会を見据えた地下空間研究と地下空間利用の今後

摘要

近年，快適な都市空間を創造するために，さまざまな用途において地下空間が活用されている。例えば，交通渋滞の緩和につながる駐車スペースの確保のための道路下の地下駐車場，地下鉄駅に隣接する地下街，真冬に地上を活用せずに快適に移動できる地下通路(例えば札幌市)，浸水対策として雨水を貯める地下貯留施設や東京•大阪にみられる地下放水路など，多様な地下空間利用の形態がある。また，東京，大阪，名古屋など大都市には地下鉄が整備され，多くの人が利用している。さらに，地下トンネル道路は地上の道路や鉄道，河川との交差を避けながら都市交通の動脈として利用されている。地下空間施設は都市の中の重要な社会インフラであり，現在，生活空間としても地上•地下を合わせた立体的な都市の再開発が進められている。このような地下空間に着目した調査•研究が，土木学会地下空間研究委員会で実施されている。本委員会により，研究活動に関連する議論の場として毎年1月に地下空間シンポジウムが開催されている。本報では，本委員会の活動概要を紹介した後で，2021(令和3)年1月に開催された地下空間シンポジウムの話題を取り上げて，そこから展望される地下空間利用の今後を示す。