スナガ二巣穴の力学的安定性の議論へ向けた濡れた粉体層中の横穴構造の強度推定実験

摘要

夏季を中心とした温暖な時期に砂浜にでかけるとスナガ二の仲間(Ocypode： Fig.1(a))の巣穴（Fig.1(b)）をいたるところに見つけることができる。巣穴の入り口の直径は2～3cm程度で，スナガ二の甲羅の大きさに合わせて作られており，巣穴の内壁に特別な補強はされていない。スナガニの巣穴は入口から斜めに掘られ，奥の方で徐々に水平に近づいていく。巣穴が作られている砂浜は，潮汐や気候の影響を受けてその状態を常に変化させているが，基本的には湿り気を含む砂粒で構成されている状態にあると考えられる。このような「濡れた粉体」 とみなせる層は，土壌や岩盤などの層に比べ穴を掘ることが容易であると考えられる一方，作られた穴の強度もさほど強くないと考えられる。そのような環境でスナガニは巣穴を作り，暑さや乾燥，捕食者の脅威から逃れるために日中の多くの時間を巣穴内で過ごしている。また，巣穴を掘ることは砂浜環境の物質循環を活性化させる効果もあるとされており[1，2],巣穴はしばしば生痕化石として地層中に残ることも確認されている[3]。そのため. 巣穴の状態は（古）環境推定の指標としても有用となりうると考えられている。