並列分散型シミュレーションエンジンの実現と評価

摘要

あらまし　近年，移動型及び固定型のセンサシステムや各種の情報処理システムはネットワーク化が進み，－ つの巨大システム（SoS）になりつつある．このため，新たなシステムの開発でも，そのもの単体だけでなくSoSの中でどの程度有効であるかを把握する必要があり，M＆Sによる事前評価が必須となる．しかし，SoSを評価するための大規模シミュレーションにおいて，個々のシステムが変わるごとにシミュレータを作り直すのは非効率であり，複数の組織で個々を開発することになることからもシミュレータのモジュール化と，個々を統合するための標準化が必要となる．このような経緯から，我々は複数の組織間で共通的に利用可能なM＆S実行基盤を開発し実際に活用してきている．本論文では，SoSを対象とする大規模シミュレーションにおいて，模擬精度向上と実行性能向上を目的に開発した，HLAに基づく並列分散型シミュレーションエンジン（SE）について説明する．本SEでは，対象とするアプリケーションでの各オブジェクトをLU（LogicalUnit：模擬単位）として扱い，LUが自律的に模擬時刻を進める方式と，イベントに基づいて他律的に模擬時刻を進める方式を実装することが可能である．また，本論文ではSEの単体及びHLAにより複数SEを統合した場合の実行性能を示すとともに，問題サイズが与えられた場合の実行時間の見積り方法や最適な粒度について考察する．また，更なる高速化のためのマルチスレッド化方式及びその初期性能評価結果についても紹介する．