血管構造情報を用いた三次元胸部CT画像における非剛体レジストレーション法

摘要

胸部CT画像を用いた肺結節の発生や経時変化の定期的な観察は，肺がんの早期発見及び良悪性判別において重要である．定期診断においては，現時点で撮影された画像（現在画像）と，過去の検診で撮影された画像（過去画像）の比較読影が行われている．このとき，現在画像と過去画像間のレジストレーションを行い，肺野内の構造の対応関係を求めることにより，経時的な変化部分を認識しやすくなる．しかし，肺野領域内には血管などの細かな組織が三次元的に分布しており，細部における高精度なレジストレーションが困難となる．そこで本論文では，血管構造情報を考慮した新たな非剛体レジストレーション手法を提案する．提案手法では血管構造情報として，血管構造らしさ，及び血管方向の情報を用い，画像間の血管構造情報の類似度を定義する．血管構造情報の類似度を用いた非剛体レジストレーションを行うことにより，位置あわせ精度の改善を試みた，提案手法を胸部実MDCT画像に適用し，正規化相互相関値（NCC）及びSum of Squared Difference（SSD）によるレジストレーション精度の評価を行った．その結果．従来手法ではNCCが0.712，SSDが185であったのに対し，提案手法では，NCCが0.800，SSDが153となり精度の改善が確認された．