真駒内滝野霊園頭大仏

摘要

15年前に築造された石の大仏を，より魅力的に見せるべく計画された参拝施設である.場所は北海道札幌市郊外のなだらかな高台に位置する，総面積約180haの緑豊かな霊園敷地内の一角である.大仏は，厳選された原石から切り出された無垢の石像で，高さ13.5m，重量1,500tに及ぶ.計画前は，平地に剥き出しのまま鎮座しており，落ち着かない印象であった.これを「より『ありがたく』見せるにはどうすべきか」という相談をクライアントから受け，大仏の頭部より下を，ラベンターの丘で覆い隠す「頭大仏」のアイデアを提案した.丘の内部には，アプローチの軸上に延びる全長40mのトンネルと，その終点で大仏を囲うロトンダが埋め込まれている.意図したのは，大仏を「見せない」まま引き延ばされたアプローチの末に，天空から差し込む光の下に大仏を仰ぎ見るという空間のシークエンスである.約15万株のラベンダーで覆われた「頭大仏」の丘は，春には新緑の緑に，夏にはラベンダーの薄紫に，冬には白銀の色に染められる.建築というよりランドスープの範疇に属する仕事だが，私自身にとっても未経験のスケールの環境整備であり，大きな挑戦であった.