城山幼稚園PROJECT Ⅰ

摘要

1,000年近い歴史を有する神社の境内の参道に面し，都心には貴重となった緑豊かな森を共有する幼稚園である.主たる園舎は1988(昭和63)年に新築されたが，遊戯室は離れの旧木造園舎を引き続き使用していた.数年前に園のカリキュラムを抜本的に改革，特に園が注力する体操のための遊戯室を建て替えると共に，新設する2歲児保育室を増築する計画となった.これを機に，将来的には歴史ある神社と森，幼稚園を含む敷地全体を新旧が融合する"鎮守の森"に整えるべく，風景の再形成をしていきたいとのことであった.園長日く，今回の建築を「懐かしい未来の日本」の風景を創造する修景の第一歩と位置付け，今後も時代に即した存分な教育•保育環境を整えていくため，徐々に既存園舎を建て替えていく方針である.梁間7.28m×桁行14.72mの遊戯室の形態と構造は，建物内外の制約と意図から抽出されている.外形の条件は雨水や落葉を園庭に落とさない配慮と，園庭からの採光を十分に得るため西側を高くした片流れ屋根に，内部は園児たちにとって精神を集中させ体操に励む場として中心性ある空間とするため，中央の高さ5mを頂点とする左右軸対称の家型空間をすっきりとつくることを意図した.