オーディオテクニカ本社

摘要

緩やかな丘陵に住宅地が広がる東京郊外に建てられた国際的なオーディオ機器メーカーの本社ビルである.創業以来，この敷地内に断続的に建設されてきた諸施設を全面建て替えし，事務管理部門と研究開発部門を本社機能として新たに集結した複合施設である.敷地は幹線道路に南面し，北へ向かい緩やかな勾配を持ち広がる傾斜面をなしている.周辺に既存樹木を残した敷地の南北軸に沿って，中央に事務所と研究所からなる本館棟を配し，西側に食堂棟，さらに東側には機械·車庫棟の3つに機能分節されたブロックが別棟配列されている.それらの間をゆつたりとした周回道路が巡り，南の前面道路に大きく開いたピロティ下のオープンヤードなどにより，周辺へ豊かな外空間をつくっている.非整形な敷地に合わせて変形された本館棟と食堂棟の大小ふたつの台形ブロックは，傾斜する地形を反映させた，それぞれが逆勾配で応答するトップライト付ぎ片流れ屋根のスカイラインを示す群造型により，ここに潜む波打つようなランドスケープの地勢を可視化しようとしている.本館棟は，プレキャストコンクリート外壁の1階部分を「BASE」にして，2階から5階の上部は白いアルミパネル仕上げの「BOD丫」が南上りの片流れ屋根により空へと大きぐ跳ね出した軒下空間を持つ.一方の単層で同様な仕上げの食堂棟は，本館棟より低く傾斜面に沿うような北上りの片流れ屋根によって，大地への一体化が示唆されている.