石渡廣一

摘要

集合住宅特集の評論は難しい.立地•周辺環境• 地域の特性など設計者がどう読み込み，どのよう な居住空間•環境形成を目指して設計を進めたの か，完成した姿のみではなかなかストンと落ちない ところがある.集合住宅の設計は多様性があり設 計者が独自のストーリーを徹底して突き詰めやすい からとち言えるであろうし，また，多様なターゲットを想定できる集合住宅であるがゆえに.ストー リーも幅が広がるからとも言える.しかしながら内 向的なストーリーに嵌まりすぎると地域社会やまち づくりの観点が弱くなり，作品の社会的インパクト も弱くなるというのも集合住宅の宿命である.特 に8月号で気になつたのは，多様なターゲットを想 定できる集合住宅であるにもかかわらず，街なか の市街地での作品のほとんどは単身者をターゲット(住戸面積20数〜30数m~2がメイン）としていることであ る.ニーズや事業経営（クライアントのオーダー）の観 点から一定の理解はでぎるが，たとえば子育て世 帯や戸建て持家から解放されたい熟年夫婦世帯な ど，社会性のあるテーマにも建築家はもつと挑戦 すべきであると感じる.