北海道庁本庁舎耐震改修

摘要

1968年に竣工した北海道本庁舎の耐震安全性を確保するための改修プロジェクトである.機能を停止せず居ながら施工が可能で，執務室が狭隘化しない免震工法による耐震改修を基本条件として，設計施工一括発注の総合評価方式で，設計者·施工者が決定された.地下2階柱頭における中間階免震改修が採用され，地上階での耐震補強を一切行わず基礎下免震を回避したため，山留，掘削，排水，躯体工事にかかる費用を大幅に低減することが可能となった.さらに機械室階での免震化にあえて挑戦することで，当初は求められていなかつた設備機器の更新というニーズに応えることができた.設備機能の移転更新と免震化工事を同時に行うため，免震化時の沈下量を制御可能な当社開発技術「免震プレロード工法」を採用した.これにより柱ごとに必要なタイミングで免震化を進め，設備機能の移転更新と免震化工事を居ながら同時に実施する「デユアルローリング工法」を実現している.免震改修された地下2階は，設備機器のコンパクト化により余剰スペースが生まれ，これを地下1階執務室と入れ替え，ドライエリアを一部オープン化することで，自然光の入る空間を新たにつくり出している.施工にあたり，設備，倉庫·執務機能移転スケジユールと免震工事範囲，施工中の地震対策等の情報を反映したステップ計画を作成.建築と設備が複雑に関連し合う工事を見える化し，発注者と早期に合意形成を行った.さらに調査，設計，施工の各段階で，3Dスキャナーの活用，3D可動モデル作成による建築と設備の干渉チェック·免震装置交換ルートの検証，設備施工図の3D化を実施した.BIMを積極的に活用することで現地調査の省人化と設計，施工段階での手戻りを防止し，設備·建築それぞれの機能移転を確実に進めることができた.