大分県立芸術文化短期大学キャンパス再整備（第一期）

摘要

既存キャンパスのリノベーションであること.それが本プロジェクトの特徴である.既存キャンパスはダイャモンド広場を中心に機能的に校舎が配置され，周囲は緑豊かな雰囲気であった.ただ建物単体で見ると，専攻科ごと機能ごとに纏まりをつくり，それゆえに閉じており，芸術活動がキャンパスを歩いても感じられなかった.そhな中「工房」だけは，屋根下空間が制作や展示の場となり，唯一開かれた場であった. 私たちは，その工房の屋根下空間を象徴的に捉え，そこを起点にキャンパスに新たな軸（キャンパスモール）を通し正門から伸びる軸（シンボルロード）との2軸によって既存校舎と新築する校舎を結び，専攻科を超えて交流や刺激があるキャンパス再編を提案した. その中でも新築するレストラン付きの音楽ホール棟と，正門横に提案した図書館は，軸と軸を繋ぐ役となり，多くの学生の移動と溜まりの場所となる. このようなキャンパス計画に対応する建築的な仕掛けとして，開かれた屋根下空間がキャンパス内に展開し，ネットワーク化されることが有効ではないかと考えた.その屋根は，構造家と検討を行った結果，地元産木材（一般に流通する製材）を使って7mスパンを実現するレシプロカル·トラス構造（相互依存構造）となった.小さな材が空間的厚みを持って浮遊する様相から，私たちはこれを「雲状屋根」と呼hだ.この雲状屋根を，場所の特性やスケール，法的条件に合わせ，純木造（図書館軒下）や鉄骨造との混合（音楽ボール棟），レシプロカル幾何を共有した木製筋雲状天井（図書館·芸術デザイン棟内部，外部キヤノピー）など, 多様に展開している.この木屋根下に展開する内外を繋ぐ場所は，学生たちの思い思いの居場所と時間を許容する「余白」である.その余白の構造化により, 学生たちの活動が滲み出し，コミュニケーシヨンが生まれる学びの場として，キャンパス全体が生き生きとした環境に再編されること.それが私たちの狙いであり，願いである.