高圧水素ガスによるゴムOリングの破壊現象の原因と対策

摘要

二酸化炭素の排出による地球温暖化，化石燃料資源の枯渴が世界的な社会問題として議論されている.このエネルギー問題を根幹とした社会問題を同時に解決する手段として，燃料電池を活用した水素エネルギーシステムが注目されている.燃料電池自動車では，航続距離向上の観点から高い体積エネルギー密度を実現するために高圧で水素を貯蔵する必要がある.このような高圧水素を貯蔵，制御する機器には，随所にゴム·エラストマー材料が高圧水素ガスシール部材として使用されることになるが，一般に高圧ガス環境下で使用する場合，ゴム材枓内部を起点とする破壊が発生し，シール性を著しく低下させる懸念がある.この破壊はブリスタと呼ばれ，ゴム材料を激しく破壊することから，シール機能を考える上で最も重要となる技術課題である.これまでに，炭酸ガス，窒素ガス，アルゴンガスなどでゴム材料のブリスタ破壊がBriscoeらにより報告されているが，70MPaクラスの高圧水素ガスによる研究はもとより，加減圧が繰り返される環境下でのOリングの破壊挙動としての研究事例はなされていない.そのため，高圧水素シール耐久性やその判定基準，耐久性改善指針に開する知見は十分に得られていないというのが実情である.