非正規雇用と専門職制度

摘要

本分科会では，非正規雇用職員問題と専門職制度との関係を考えるため，基調報告と二つの報告，質疑応答を行った。参加者数は52名。はじめに，金城学院大学の薬師院はるみ氏が「職員制度の確立とは何か：フランスの非公務員図書館員に関する調査から」と題して基調報告を行った。まず，日本の状況について，20年以上前から専門職制度と職員問題は図書館界で議論されてきたが，状況は改善していないという指摘があった。専門職としての司書職制度を築くことと，労働条件の改善は別問題で，後者を進めるためには社会的な仕組みが必要だが，それが整いていない。そうした背景を踏まえた上で，フランスの公務員としての司書職制度の下では，非公務員でも身分規定が整っているとの説明があった。また日本に比べて非正規の司書の数は少なぐ公務員や準公務員になれる可能性が高いことや，公務員制度改革の下で何度も法律が改正され，非公務員の安定雇用化が進んだことなどを説明した。非公務員の制度設計が積極的にされてきたフランスに対し，日本では制度設計が放置されてきた状況も明らかにされた。最後に，司書職制度を巡る議論においては，図書館だけでなくそれが属している外的な枠組み，行政制度，文化に対する公共政策等を検討しないと改善は難しい，との認識を示した。