全身皮膚電子線療法における爪保護のためのリアルタイム可変型タングステン含有ゴムの応用

摘要

菌状息肉症はT細胞に由来した悪性皮膚T細胞リンパ腫であり,放射線感受性が高く，電子線による放射線療法は有効である.日本皮膚科学会による皮庸悪性腫瘍診療ガイドラインにおいて，全身皮廣電子線(total skin electron beam:TSEB)療法は病期がIB-IIA期の菌状息肉症に対する治療として推奨されている.またEORTし(European Organization for Research and Treatment of Cancer)によるガイドラインでは，6-10週にわたり，30-36分割で処方線量31-36 Gyを照射するよう推奨されている.近年では20 Gy以下の低線量による治療も試みられているが,線量が高いほど奏功率が高い.しかし.TSEB療法では皮膚炎,脱毛，爪の脱落·変形，浮腫といった合併症が発生する.特に，EORTCは手足の爪に，早期障害として治療開始から6-8週で一時的な成長の停滞や喪失が100%にみられ，晚期障害として慢性的な爪ジストロフィなどが報告されており,爪の防護は必須である.一般的に電子線の遮蔽には，鉛が広く使用されている.しかしながら，鉛は人体に対して有毒性，蓄積性が報告されており，人体に侵入した場合.中毒症状を引き起こす可能性がある.また鉛は，患者のみならず防護具の作成者にとっても有毒で，廃棄の面でも問題を抱えている.更に鉛を用いて手足の爪の鉛放射線防護具を作製する場合は，手足各指の大きさと爪の形状に合った作製が著しく困難で.時間を要する.また，鉛で作製された防護具は爪への密着度が悪く，厚みの不均一等の問題から遮蔽の不確定度が大きく，新しい防護具の代替は急務である.