原位置地下水調査法の留意点と建設現場での活用5.多孔式揚水試験

摘要

本稿では多孔式揚水試験(以下，揚水試験)の計画·実施·結果解析の各段階でその基本的な検討事項を整理し，留意すべき点をまとめる。いずれも理論的背景に基づき，実務面での検討事項や留意点を示したものである。2.では揚水試験を実施する前に用意すべき設備が満たすべき要件と，これらの設備を実際に使用して，本試験の前に実施するいくつかの試験の実施目的と実施概要を示す。また，単孔式透水試験などと比較すると，揚水試験では地下水流量および継続時間が多大となることから，実施時における環境配慮の必要性も示す。3.では試験結果の解析手法について，その基礎的な手順を示し，留意すべき点をまとめる。結果の解析に用いるいくつかの整理方法を紹介し，試験結果をこれらのグラフに整理することで基本となる解析手法の適用が妥当であるかの判断材料となることを示す。解析方法ではパーソナルコンピューターを活用した手法など近年の技術環境に応じたエ夫も紹介している。4.では実現場で遭遇することの多い理想条件とは異なる帯水層や井戸条件のもとでの試験結果がTheis理論(Theis,1935)と比較するとどのような差異を見せるかをまとめ，特に近年石油エ学分野で開発されたderivativeプロット(Bourdet et al.，1983)を用いることで試験結果に影響を及ほす流れモデルがより明瞭に識別できる可能性を紹介する。