「地域の思い」から始める事前復興計画

摘要

2021年3月11日で東日本大震災の発生から10年を迎える。復興庁の資料(2020年9月現在)によると仮設住宅等の居住者は約1000戸(ピーク時12万4000戸)まで減少し、インフラや公営住宅•宅地整備もおおむね完了している。また生業についても宮城•岩手•福島で製造品出荷額は震災前の水準を超える水準にまで回復している。原子力災害からの復興事業は道半ばではあるが、自然災害による被災地のハード整備はほぼ完了した。その一方で津波に対して安全なまちは造られたが、人が戻ってこないという問題が発生している。震災が発生する6年前(2005年4月)に石巻巿と合併した雄勝町では、災害前618世帯であった旧雄勝町中心部の世帯数が70世帯（11.3%）にまで減少した。宮城県の被災自治体の震災前からの人口変化を見ると、①人口が増加する(仙台市、名取市)、②人口減少率が災害前の水準に戻る(石巻市、気仙沼市)、③人口減少率が戻らない(南三陸町、女川町)という三つのパターンが見られる。災害は社会のトレンドを加速させることが知られており、被災地域は本来であれば数十年先に経験する人口減少•高齢化という問題と直面することとなった。