新ヨーロツバ大全(Ⅰ&Ⅱ)

摘要

本書では、家族構造、識字率、出生·死亡·進学率といつた統計から、ソ連崩壊やアラブの春を予想したことで有名なフランスの歴史人口学者、エマニユエル·トッドが、西欧州に存在する四つの家族構造を基にその近代史の背景を考察している。例えば、ナチスの台頭は敬虔なプロテスタント地域で起こる。ドイツの典型的な家族構造は直系家族。父親が権威を持ち長男が家を継ぐこの型の価値基準は、権威と不平等。権威である神と直接向き合い(自分達だけ)天国に行くことを目指すプロテスタントの教義は、形而上学的に直系家族の価値観に寄り添う。聖書を読むため、そして家を継がせるために、親は子に読み書きを教え込むことで識字率も高まる。しかし19世紀後半、ダーウィン革命による神の死が、そして産業蕃に伴う都市化による父との距離感の増大が、形而上学的にも地上においても精神的な価値基準の喪失を招く。これが狂気にも似たニーチェの叫びに現れる。さらに第一次世界大戦での敗戦•大恐慌による経済的困窮が追い打ちをかけ、そこに入り込hでくるのが、優越人種アーリア人によるドイツ国家再生と人種差別を謳うナチズムである。