都市が縮退する時代における土木の役割

摘要

20000年以降、わが国の人口は減少傾向に転じていることはよく知られており、さまざまな機関において人口減少と高齢化に伴うわが国の将来像について考察がなされている。たとえば、日本創生会議が2014年に発表した「消滅可能性都市」について、2040年には地方中核都市のみではなく都市部も含めた全国896市町村が該当するとの試算がなされている。また、2011年2月に発表された国土交通省国土計画局の国土審議会政策部会長期展望委員会による「国土の長期展望」では、2100年には人口が5000万人を割り込み、人口が減少傾向に転じてから100年で明治時代後半の水準になるとの予測や、それに伴い、社会基盤の維持管理.更新費が増大される予測が客観的に示されている。いずれの資料でも、現実問題として人口減少と高齢化は急激に進展していることが示されており、今後20年後、30年後の中期的なわが国の姿も具体的に見据えながら、国土維持の観点から地方中核都市としてあるべき姿の追求やそれを目指すための対策を考える必要がある。特に、全国の多くの地方中核都市では、人口減少や高齢化の状況が先行しており、課題先進地域の事例として地方中核都市特有の各種の課題が取り上げられることもある。従って、地方も含めてさまざまな都市の将来のあるべき姿を描きながら対策を進める、あるいは対策例を分析してわが国全体の持続可能性を考えていくことが有用である。