拡張現実感技術の設備保守への応用

摘要

拡張現実感（Augmented Reality ： AR)は，3次元の位 置や方向を直感的に示すことができる，裸眼では見えない ものを可視化できる等の特徴があるため，そのコンセプト が提案されて以来，さまざまな保守作業支援への応用が試 みられてきた。しかし，ARの原型であると言われてい る，アイバン•サザランド博士のThe Sword of Damoclesが開発 さ れてから約50年が経過した現在でも，AR が保守の現場で日常的に使用されるまでには至っていな い。これは，ARを実現する際に必要な時間的•金銭的コ ストに比べて，ARを利用することによる効果が小さかっ たことが原因の一つである。しかし，近年，トラッキング 技術やディスプレイ技術など，ARを実現する際に必要な 要素技術の性能が向上し，コストも減少してきたため，一 気にARが保守の現場に導入される可能性が高まってき た。本稿では，これまでのARの保守作業支援への応用の 試みを概観するとともに，今後の予想される研究開発の方 向性について解説する。