視覚的な注意の瞬きに対する聴覚刺激の影響

摘要

視覚刺激の提示時に聴覚刺激を同期させて提示すると、視覚刺激の知覚がしやすくなる現象が知られている。 連続する視覚刺激を知覚させる高速逐次提示の実験では、2 番目の標的刺激が知覚できないという「注意の瞬き」現 象も、聴覚刺激の同時提示によって抑制される。本研究では、聴覚刺激の提示時刻と提示頻度の効果について検証し た。実験における2 つの標的刺激の刺激提示時間間隔は250ms であった。まず、提示時刻の同期性を2 番目の標的刺 激の提示時刻を基準に変化させた場合の効果を調べた。2 番目の刺激提示よりも175ｍｓ前、125ms 前、0ms 前（T1 と同時提示）の3 つの条件を設定し、聴覚刺激を提示した。その結果、標的刺激と聴覚刺激の提示タイミングに有意 な交互作用が見られた（F (1, 29 ) = 4.39, p < .001）。下位検定の結果、2 番目の標的刺激と聴覚刺激を同時提示した条 件と、175ms 前、125ms 前、0ms（T1 と同時提示）の時に聴覚刺激を提示した条件、聴覚刺激を提示しなかった条件 間に有意差がみられた（同時提示：p = .000, p < .001, 175ms 前：p = .04１, p < .05, 125ms 前：p = .014, p < .001, 0ms (T1 と同時)：p = .023, p < .05 ） 。125ｍｓ前に聴覚刺激を提示した条件における1 番目と2 番目の標的刺激の平均正 答率を比較した結果、有意な差がみられなかった（t (1,28) = 1.94, p = .061）。視覚的な注意の瞬きの聴覚的な抑制効果 の提示時間範囲に関しては、2 番目の標的刺激の提示時刻よりも50ms 前の範囲まで聴覚刺激の効果があることが示 された。さらに聴覚的な妨害刺激を与えながら、視覚的な高速逐次提示をした実験では、標的刺激画像が出現した場 合は弁別音を提示した。その結果、標的刺激に対する聴覚刺激を与えた条件と聴覚刺激の提示タイミングに有意な交 互作用が見られた（F (1, 29 ) = .029, p < .05）。175ms 前に聴覚刺激を提示した条件における1 番目と2 番目の標的刺激 の平均正答率を比較した結果、有意な差がみられた（t (1, 28 ) = 4.294, p = .000）。したがって、注意の瞬きの抑制は生 じていないことが示唆された。