視覚障害者の自杖の使い方と空間知覚に関する基礎的研究: 全盲者の歩行時における白杖の環境への定位の仕方に着目して

摘要

現在の歩行訓練は、誘導ブロックを想定したスライド法を中心に指導が計画されている。また現在の建築や都市の環境は、そのスライド法を前提として誘導ブロックが設置されている。比喩的にいえば、視覚障害者にとっての現在の移動環境は、晴眼者の中で自転車に乗れる人のみが利用できる公園のようなものである。それは、視覚障害者に対しスライド法を身に付けることを条件に課している、歩行訓練ありきの環境デザインである。いうまでもなく、たとえ安全でも誘導ブロックの上を歩くだけで視覚障害者の日常生活が満たされることは決してない。