上野博物館の平面計画について: 明治初期の博物館計画に関する研究

摘要

本稿は上野博物館の平面計面を中心に、明治初期に計画された教育博物館、京都博物館案とあわせた3館の関係性を考察した。1.上野博物館の平面計画は、当時国内では事例のない博物館計画に対して大久保利通は海外からの情報収集を行っていたが、実現した平面計画の元となる原案は確認できなかった。そのほかイタリア人のフォンタネージ若しくはカペレッティが平面計画を作成したとされているが、彼らの実績からは実現した平面計画の元となる原案は確認できなかった。2.上野博物館の平面計画は、ほぼ同時期に計画されていた京都博物館案、教育博物館と同様に左右対称の直線状の平面形状をしており、短辺方向を分割し順路動線をとるという共通点が確認でき、動線計画に関して同じ考え方のもとに計画されていた3.京都博物館案、教育博物館、上野博物館、3館の平面計画の原案は「ヘールツ案」と考えられる。「ヘールツ案」は、京都博物館案の初期に作成されたものと考えられており、明治8年2月から遅くとも明治9年4月までには作成されている。この期間は教育博物館の計画時期、そして上野博物館の計画地の選定時期と重なっている。%This paper verifies the circumstances underlying the floor plan of the Ueno Museum. It also explores the relationships among the Ueno Museum, the Educational Museum, and the Kyoto Museum, planned during the early Meiji period. The floor plan of the Ueno Museum is characterized by straight lines that symmetrically divide the floor into rectangles. The divisions formed a route flow line leading visitors through all of the exhibition rooms, starting from the entrance hall.