関一の田園都市思想の変遷に関する研究高等商業学校教授時代から大阪市助役時代まで

摘要

This study aims at considering about the relationship between the history of Seki's Garden city theory and town planning in Osaka city. The results are as follows. 1. Some changes of he Seki's Garden city theory are found through the period of professor and the period of deputy mayor of Osaka city. 2. Some possibilities of the relationship between the Seki's Garden city theory and the town planning or the housing policies in Osaka city are found. 3. It becomes clear that Seki's Garden Suburb theory are as the extension of his study of labor issues from the period of professor.%関は高等商業学校時代からの研究を行っていた社会政策、特に労働者問題に関する研究においてすでに関の田園都市思想の萌芽が見られた。しかし、あくまで労働者問題への対策の中の一つとして考えられており、またその解釈もまだ十分具体的な政策につながるものではなかった。助役時代になると、大阪市の都市拡大と都市計画の必要性という土壌を得て、その萌芽は関の継続的な研究という栄養により、著しく生育をしていく。関の田園都市に対する研究は年々具体的な政策を意識したものへと変遷していき、さらに彼が求められていた大阪市の都市計画という大きな事業をやり遂げるための基盤ともなる構想へと結びついていった過程が本研究を通して明らかになった。関に関する資料から判断すると、特に1921(大正10)年あたりが大きな転換期になっており、"田園都市"と"田園郊外"を明確に分け、日本とりわけ大阪の実情を考えると"田園郊外"を、そして"工業村"、関の言葉でいう"ガーデン•ビレッジ"を推奨し研究するべきであることを強調している。"工場村"、田園都市運動によって生まれた"田園都市"の思想が現実の制約の中で「分散（ディストリビューション）」という軸を残しながら"田園郊外"という概念に発展していったという理解に達したこの時期が、関の田園都巿思想の大きな到達点のひとつである、ということも本稿で明らかになった点である。田園都市の資金メカニズムに関しては、当初"田園都市"、"工業村"に強い関心を示していたが、次第に土地政策の一つとして捉えるようになり、"田園都市"自体は否定的に捉えるようなっていった経緯が明らかになった。