長期間の工事履歴に基づく部位•設備ごとの信頼度の算定及び これを活用した最適な更新周期の推計

摘要

高度成長期前後に構築された建物は押し並べて老朽化などの課題を抱えている。中山らの調査 では、東京23区にストックされた賃 貸事業用のオフィスビルの賃貸面積の総量は1,226万坪に達するとと もに、平均築年数は29.1年であり、特に中小規模の建物の老朽化が 進展している点を指摘している。老朽化した建物の内、全面的に更 新できる建物は一部に留まり、現実的には多くの建物が長期にわた つて有効活用されていくことになると考えられる。従って、現存す る建物の性能や健全性を維持するとともに、可能な限り構造物や建 築設備の長寿命化を図ることが重要であり、そのためには適切な修 繕工事や改修工事を効果的な時期に計画的に実施する必要がある。 本研究は建物に実施された実際の修繕工事の記録を分析することに より、実施内容や理由あるいは実施時期について定量的に評価する とともに、分析から得られた情報から建物部位•設備に関する信頼 度や故障率を算定し、故障の起こりやすさを把握する。また故障リ スクを勘案した適切な更新周期を推計することも目的としている。 尚、本論文における故障リスクは、故障の起こりやすさと故障発生 時にかかるコストの両方を包含している。%This study analyzed long-term records of the repair works on buildings. The reliability and failure rate of parts and equipment in buildings were obtained by the actual condition surveys and the life spans of these parts were estimated from the calculated reliability functions. In the final section, we proposed the most suitable renewal cycles of parts and equipment using these indexes.