スラム改善事業における居住環境評価: ボレイケラ地区（カンボジア•プノンペン）を事例として

摘要

本研究では以下のことを明らかにした。(1)移転に対する住民の基本的な評価を定量的に確認した。降雨時の被害を経験したことのある住戸は約7割であつたが、移転することでそれがなくなった。9割の住戸が購入したものであるにもかかわらず、立ち退きの不安を常に抱えていたが、移転することで権利が安定した。移転先では商業が成立しにくい環境にあるため、4割の住戸で収入が減っている。地区内の付き合いは減ったが、地区外の人を住戸へ呼びやすくなつた。近隣との交流の機会と関係の質が低下し、外出頻度も低下している。(2) 居住環境改善事業に伴う移転を評価する際に、住居については、住戸間取り•面積•増改築•建物配置•高層化•駐輪•インフラ•建物の安全性といった8点、生活環境に関しては、衛生-治安•騒音の3点、経済に関しては、収入•商売•住居費•公共料金•追加出費の5点、社会関係に関しては、人間関係•自治会-マナ一•立地•アクセス•権利•再移転の7点の課題に整理した。これらは事業の計画を推進する際に検討すべき事項としても位置づけなおすことができる。