周防大島町における自治体による小規模高齢者通所介護施設の整備効果: 島嶼地域における高齢者通所介護施設の配置計画論

摘要

島嶼地域では1989年のゴールドプラン策定を契機に、各自治体に特別養護老人ホーム（以下、特養）併設型の通所介護施設整備が開始された。2000年には介護保険制度が導入され、民間法人の参入により全国的に通所介護施設数が急増する一方、中山間•島嶼地域へ参入する民間法人は少なく、現在も施設整備が進んでいない地域は多い。特に島嶼地域では地理的隔絶性•環海性の自然条件から、高齢者福祉サービスの選択肢は制約されているのが現状である。また、入所介護施設が立地する島嶼地域は少なく、介護度が重度化した場合、高齢者と家族は通所介護と在宅介護サービスを利用し在宅生活を維持するか、或いは本土の施設に入所するかの選択が求められる場合が多く、通所介護施設は在宅介護選択にとって重要な役割を果たす。また、生産年齢層を中心に人口が減少し、高齢化の進行に伴い高齢者のみの世帯割合が上昇傾向にあり、かつ今後は高齢者人口の減少が予測されることから、地理的•社会的に不利な条件に加え高齢者の支え手が少ない島嶼地域における高齢者通所介護サービスの維持が課題として位置付けられる。但し、島嶼地域では集落が沿岸部に点在し、島を周回する幹線道路網が中心で山間部の道路が未整備なのが一般的で、交通条件の制約から通所介護サービスのための送迎に時間を要す課題を抱えている。