断熱改修とエアコン・床暖房を組み合わせた伝統民家の温熱環境改善効果: 改修前後と運用時の3時点計測結果の比較

摘要

既存建物の環境性能を向上させ，良質なストックを確保することは今後ますます重要となる。断熱改修は室内温熱環境の質を向上させると同時に省エネルギーを実現させる有効な手法であるが，設計・施工を行う際に参考となる情報が少なく，改修事例の規模や程度と関連した評価データも十分に整理されていない。本論文ほ，山口市内の福祉施設を事例として，断熱改修前後の温熱環境や使われ方に着目した調査を実施し，汎用性の高い改修手法の提案に繋げるための基礎資料を提示している。対象車例の特徴は，全面改修ではなく主な室の床と天井のみ断熱強化し，暖房設備として床暖房とエアコンを増設することにより冬季温熱環境の改善を図るところにある。このような改修によりどの程度の効果が得られるかを示すことは意義深い。結論には，開口部の断熱強化も必要であると言及されている通り，更なる検討を期待するとともに，エネルギー消費量も併せて評価していただきたい。%In this paper, winter thermal environment of traditional timber house was measured before and after installing thermal insulation and floor heating. After this renovation, comfortable environment without vertical temperature difference had been secured even in early morning by the combination of floor heating and air conditioner. Therefore, this technique was considered to be an effective method to repair traditional timber houses in comparatively warm area.