列車制御技術の変遷(その5):藁をも掴み鉄道の再生を

摘要

省エネルギや環境問題を背景に、海外における鉄道事業への視線は熱いものがある。しかし、鉄道に対し基本的に独立採算制を強いてきたわが国では、むしろ悲観的なニュースが多い。特に地方鉄道は、再生のための数々の施策が講じられているものの厳しい環境下にある。JRや大手民鉄が運営する幹線鉄道も、抜本的な機能向上なしに数十年を経る。もちろん、地方鉄道の経営危機は、単なる鉄道事業者のみの努力では解決できない構造的なものがある。また、幹線鉄道も、ニーズには十分応えているとの見方もある。しかし、数ある交通手段がそれぞれに魅力ある姿を追い求めている中で、鉄道のみが現状維持に汲々としていては展望がない。一方で、列車制御を質的に改善し、経営的にも機能的にも有利な状況を切り開く可能性がある。経営危機や鉄道の現状を憂える声があるにもかかわらず、実は、真剣に技術的処方箋を検討したいという声は少ない。過去4回にわたって連載してきた「列車制御技術の変遷」の最終稿として、明日の鉄道事業に資する技術という面から列車制御を考察してみたい。