メタ磁性形状記憶効果を示すNi基ホイスラー合金の磁気特性

摘要

ホイスラー合金とはX_2YZ型の分子式を持つ合金で，ここではXがNi,YがMn, ZはGa，In, Sn, Sbなど第13〜15族元素の一部を指す.この化学量論組成Ni_2MnGaホイスラー合金(Ni_(50)Mn_(25)Ga_(25))が熱弾性型マルテンサイト変態を生じることは，中性子回折実験により1983年にWebster等によって発見された.その研究によると，376Kにキュリー温度を有する強磁性相はL2_1型と呼ばれる立方晶規則化構造であるが，温度低下に伴い約200Kで正方晶構造のマルテンサイト相に変態することが示された.その後，1996年Ullakko等によりNi_2MnGaがマルテンサイト変態温度直下で約0.2%もの磁歪を示すとの報告がなされ,多くの研究者がNi-Mn-Gaホイスラー系合金の研究を始めるきっかけとなった.この合金の場合，磁場印加に伴う結晶学的ドメイン(バリアント)の再配列により巨大な歪が得られ，温度変化により駆動する従来の形状記憶合金とは異なり，磁場による高速駆動が可能となることから応用面でも大いに注目された.そして，精力的な研究が行われた結果，Sozinov等によりNi_(48.8)Mn_(29.7)Ga_(21.5)の単結晶において9.4%もの巨大双晶磁歪が報告され，一層この種の研究が加速した.