韓国の国防中期計画にみる 戦力整備の動向

摘要

2020年8月、韓国国防部は2021年から25年までの5年間の国防中期計画1)を公表した。今回の計画は作戦統制権の移管を企図する文在寅(ムン·ジェイン)政権の政治的な意図が感じられる中期計画となった。韓米両国は作戦統制権移管のために次の3つの条件に合意している。その条件は、①連合防衛体制を主導できる必要な軍事的能力、②包括的な北朝鮮の核·ミサイルの脅威への対応能力、③作戦統制権移管に付合した朝鮮半島および域内の安保環境である。現政府は、この条件を満たすために巨額の国防費を投入し、偵察衛星、精密打撃ミサイルおよび迎撃ミサイルなどの導入を盛り込hだ。また、初めて軽空母という言葉も入り、原子力を念頭に置いたと思われる潜水艦の建造も計画に含まれた。この中期計画の所要経費は300.7兆ウォン(約26兆9,477億円)で2)、国防費の年平均増加率は6.1％となっている。韓国の国防費は戦力の増強にかかる「防衛力改善费」と、部隊が活動するために必要な人件費等を含めた「戦力運用費」に区分される。そのうち「防衛力改善费」に100.1兆ウォン(33.3%)を割り当て、「戦力運用費」に200.6兆ウォン(66.7％)を割り当てた。本稿では中期計画における「防衛力改善費」に焦点を当てて、韓国の戦力整備の動向について確認する。尚、第2項の「防衛力改善費の概要」の記述にあたっては、韓国国防部の公表資料に従い掲載し、説明及び参考資料は下欄に提示する。尚、別添として韓国国防部が公表した2021年度国防予算(案)の抜粋を添付する。