今後、日本の防衛力整備で求められること：国家安全保障戦略•防衛大綱•統合防衛戦略の議論に向けて

摘要

日本国民にとって、2017年は国家の安全保障 を意識する年になったのではないだろうか。日 米同盟を揺るがしかねない「日本がさらに（駐 留米軍経費を）負担しなければ米軍を撤退させ る」と発言していた大統領候補ドナルド•トラ ンプ氏が大統領選挙に勝利し、2017年1月に新 大統領となり、就任演説で「アメリカ第一主義 (アメリカ•ファ一スト）」を打ち出したこと。 2月には、北朝鮮の独裁者である金正恩朝鮮労 働党委員長の異母兄、金正男氏が、マレ一シア のクアラルンプール国際空港ロビーという衆人 環視の中、北朝鮮という国家的な関与のもとで 殺害され、凶器として大量破壊兵器(化学兵器） であるVX剤まで用いられたとみられている こと。北朝鮮は未だ全ての日本人拉致被害者 を解放せず、1994年の米朝枠組み合意で核開発 を中止する条件で援助を受け入れたにも関わら ず、公然と国家間の約束も破っている。このよ うな国家が、8月29日と9月15日の二度にわた り、日本列島を飛び越える形で弾道ミサイルを 発射し、東日本で広く「Jアラート」という事実 上の空襲警報が鳴り響いた。9月3日には、地 下核実験を行い、北朝鮮は水爆実験に成功したと発表した。そして、11月29日には「火星15」 をロフテッド軌道で高度約4,500kmまで打ち 上げた。金正恩委員長は、2018年の新年におけ る挨拶で、「アメリ力本土が核攻撃の射程圏内に あり、核のボタンが私の事務室の机の上にいつ も置かれている」と述べ、北朝鮮の内閣機関 紙•民主朝鮮は2018年1月4日付で、「日本の領 土を焦土化させる」と報じている。米ソ冷戦時 代での東側陣営と西側陣営との緊張した関係で あっても、核抑止については機能していたと言 えよう。だが、自らの様々な行いにより、国際 的に信用されていない北朝鮮という国が、核兵 器と弾道ミサイルを保有することは、弾道ミサ イルの射程圏内にある全ての国にとって脅威で ある。米国、英国、仏国、ロシア、中国などの 核保有国のなかに、さらに一国追加されるとい う話ではないのである。