板谷峠小史「极谷街道」への邂逅ど国鉄近代化の足跡

摘要

板谷峠の物語は、鉄道開通のはるか以前か らつづく峠の歴史を紐解くことからはじめな ければならない。今日の福島馳島市と山形県米沢市は、江 戸時代初頭はともに上杉家三十万石の米沢藩 領であった。米沢藩は米沢に本城、福島に支 城を設け、双方を最短でつなぐ重要な交通路 として、また江戸への参勤交代路として板谷 峠を越える板谷(米沢)街道を整備した。大沢、 板谷、李平、庭坂などには宿場が整えられ、 中間地点の板谷宿は藩主用の「板谷御殿」を はじめ11軒の旅籠が並ぶ宿場を形成してい たという。その後、上杉家の後継ぎ騒動によ る領地没収で福島側が幕府天領となった際、 領域界は板谷宿の東方、産ケ沢に引かれ、板 谷には警備の関所（番所）が設けられた。そ の領域界がそのまま明治の廃藩置県時に米沢県（羽前国）と福島県（岩代国）境として位置 づけられたと考えられる。