尿中総ヨウ素

摘要

ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料であり,ヨウ素の摂取不足,過剰摂取はいずれも甲状腺機能に影饗する.ヨウ素の摂取量が適切か否かの診断には,尿中ヨウ素量の測定が有用であるが,その値は排尿前の食事ヨウ素量の影響を強く受ける.それゆえに,正確に測定するには一日畜尿中のヨウ素量の測定が有用である.しかし,やや手間がかかるので,それに代わるものとして尿中ヨウ素と尿中クレアチニン値を測定し,1日当たり尿中ヨウ素排泄量(UI)を算出する方法が行われている.Basedow病では甲状腺ホルモン合成が亢進するので,ヨウ素は甲状腺に集まり尿中のヨウ素は減少する.これに対して,無痛性甲状腺炎などの破壊性甲状腺炎では甲状腺の破壊により甲状腺に集積されていたホルモンやヨウ素が血中に放出されるために,尿中のヨウ素は増加する.この現象を利用して,放射性ヨウ素を使用しないで両疾患の鑑別を行う方法がつくられた.現在,尿中ヨウ素量の測定が保険適用として認められているのは,この目的だけである.