ポケットチューター 体表からわかる人体解剖学

摘要

私たちは日ごろから診療のなかで，患者の体のなかを体表から透かしてみることを，意識的にあるいは無意識的に行っている.第一には，それを診察の場合に行っている.肺の聴診をしてcrackleが聞こえれば，肺のどの葉に異常があるかを想定する.心雑音を聞けば，どの弁がどのように異常をきたしているかを想定する.最強拍動点が心窩部にずれていれば，右心肥大が起こっているのではないかと想定する.腹痛を訴える患者がいて右上腹部の腹壁の筋緊張を触れれば，その奥に胆囊などの臓器をみて取り，その炎症や感染があるのではないかと想像を巡らせる.このように診察のなかで所見を取り，そして体表から体のなかを透かしてみて，どの臓器・系統にどのような異常が起こっているのかを推論する.その結果ある程度病態が把握できれば，それがどのような病因で起こっているのかに考えを巡らす.