UHF帯RFIDにおける効率的な複数RFタグエミュレーション

摘要

大量RFタグの読取りや，繰返しによる読み漏らし防止の目的でRFID読取りの高速化が求められている．特に長距離通信かつ，大量のRFタグを読み取ることが要求されるUHF帯RFIDではこの要望が強く，多くの高速MACプロトコルが提案されている．通常，MACプロトコルの実測による性能評価は複数のRFタグを読み取ることで行われる．この場合，複数のRFタグを並べる手間がかかるだけでなく，評価結果を同じ基準で比較することが難しいという問題がある．この間題は複数のRFタグのプロトコル動作を模擬するエミュレ一夕によって解決できる．1台のエミュレ一夕ハードウェアでより多くのRFタグを模擬するため，本論文では，MACプロトコルの確率的特性に着目し，エミュレーション精度重視の従属試行モデルと計算効率重視の独立試行モデルの二つのエミュレーションアルゴリズムを提案する．また，硯実のRFタグの動作をより正確にエミュレ一夕で模擬するため，各エミュレーションアルゴリズムでは，RFタグ応答の受信電界強度の確率特性の実測データに基づいてキャプチャ効果を考慮する，二つのアルゴリズムのエミュレーション精度と計算効率に関する基本的特性は数値計算によって確認し，従属試行モデルの場合には，誤差平均0．2％，エミュレ一夕ハードウェアに対する要求が低い独立試行モデルであっても，MACプロトコルの比較評価に十分な精度（オフセット誤差7．3％）で，RFタグの読取り時間（インベントリ所要時間）を模擬できることを明らかにした．更に，8bit MPUを有するプログラマブル電池付きパッシブタグ（BAP）に独立試行モデルを実装し，実際のRFタグ読取り実験との比較によって，提案アルゴリズムの妥当性を確認した．その結果，提案するキャプチャ効果を考慮したアルゴリズムを用いることによって，オフセット誤差校正後，誤差率0．6％の精度で実際のRFタグのインベントリ所要時間を模擬できることを明らかにした．