情報収集型サーバにおける受信バッファサイズ共有とTCPコネクション数の調整に基づくQoS制御

摘要

現在のインターネットを構成するIP網では，高負荷時などにおいて個々のユーザの通信品質(Quality of Service: QoS)は保証されていない.しかし，緊急性を有するクライアントやワイヤレスなど劣悪なアクセス環境にあるクライアントに対しては，一定レベルの品質の提供が不可欠である.本論文では，生体センシング情報や介護のための監視映像などのクライアントの情報を同時に収集するサーバに焦点を当て，優先度の高いクライアントに対し目標とするQoSを確保するという方針の下で，TCP受信ソケットバッファサイズ及ぴTCPコネクション数の調整手法を提案する.本手法は，既存手法で用いられるFEC (Forward Error Correction),誤り制御，ふくそう制御，フロー制御などをコネクションごとに独立して適用するアブローチとは異なり，情報収集型サーバに接続された複数セッション間の協調制御により，アプリケーションの視点から必要な目標スループットを要求する高優先クライアントや利用可能な物理的リソースの乏しい劣悪環境下のクライアントなどのスループット性能を改善する.このような多様なアクセス環境から様々な優先度レベル（要求QoS)で情報をサーバへ転送するシステムに適した多対1型でマルチセッション連携機能を有するトランスポートプロトコルは，筆者らの知る限り，今まで研究されていない.シミュレーション評価の結果，本提案方式は物理限界を超えない範囲で優先度に応じた要求通信品質の確保が実現できることを明らかにする.