浸水対策

摘要

浸水被害は、安心で安全な日常生活を脅かすばかりでなく、被害が甚大なものであれば、都市機能を麻痺させ、さらには人命さえも奪うこともある自然災害である。このような浸水被害をもたらす要因としては、都市化が進んだことで土地の雨水浸透機能が低下し、健全な水循環が失われたことにより雨水流出量が増大したことのほか、近年では、既往の下水道計画を大きく超過する規模の集中豪雨の多発や、人口·資産の都市部への集中化や地下空間利用の拡大などによる都市構造の高度化などにより、都市部における内水氾濫の被害リスクが増大していることがあげられる。1年間に1時間に降水量50mm以上降った大雨について、昭和50年から平成元年までの年間発生回数に対して、平成12年から21年までの年間発生回数は約3割増加しているという統計もある。PCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書統合報告書(平成27年3月)においては、今後、年平均降水量が増加し、極端な降水がより強く、より頻繁となる可能性が高くなると指摘している。このような状況を踏まえ、下水道事業としても、浸水被害を最小に軽減するため、官·民が一体となって、貯留浸透施設などのハード対策を効率的·効果的に推進するとともに、内水ハザードマップの策定·公表などのソフト対策や、防災面での自助の取り組みを組み合わせた総合的な浸水対策を着実に推進することが求められている。