絶滅危惧種ミズキンバイ(Ludwigia stipulacea)の生育と光条件との関係

摘要

我が国の生物多様性の保全においては，希少性の高い野生動植物の保全管理に関わる諸研究の蓄積も重要である。そのような中，環境省レッドリストにおいて絶滅危惧Ⅱ類に指定されている水生植物ミズキンバイ(Ludwigia stipulacea)がある。本種は，河川の砂州や平地の水田などといったより陽光な光条件が確保され，かつ自然的•人為的攪乱の起こりやすい環境を好む浮葉および抽水植物である。本種の保全に関わる既往研究としては，都市河川内の自生地の生育生態の解明(大澤•勝野2007)，挿し木による移植手法の検討，また開花生態と訪花昆虫(大澤2005)などについて調査した知見はあるが，より多様な移植地の確保やその選択肢の拡大，また移植地での適切な維持管理手法の確立においては，本種の生育好適環境の把握に向けたより詳細な知見の集積も重要である。そこで本実験では，本種の生育確保に重要とされている光条件と生育生長•開花動態との関係に注目することとした。具体的には，光環境条件を段階的に設定した実験区に本種を移植し，その生育•開花動態への影響を経過観察することで，本種が生育に必要とする好適な光条件を把握することを目的とした。