19世紀オランダにおける政治算術と確率論の統合: R．ロバトの年金現在価額評価論と偶然誤差理論

摘要

人口統計から得た規則性を社会問題解決策に結び付ける政治算術は，17世紀半rnばのオランダでは生命表と確率論を統合した終身年金現在価額評価として現れた。rnこの伝統は19世紀前半，数学者のR．ロバトによって継承される。彼は統計資料をrn掲載する『王国年鑑』を長年編集して統計の改善普及に貢献し，また若き日知り合っrnたケトレーを生涯敬愛し交流したが，その社会物理学には同ずる事なく政治算術とrn確率論の統合という伝統の発展に努めた。彼は年金現在価額評価論で，終身年金，rn寡婦年金，結婚年金の現在価額評価方法及びそれら三者の関連を明らかにし，アムrnステルダムでの10年間平均の生命表を用い実際に評価を行った。また彼は統計資rn料の平均等と偶然誤差との関係を知るため，当時仏国で発展した確率論を基礎に，rnその和や平均がある区間に収まる確率を正規分布で捉えようとした。しかし，19rn世紀後半のオランダ統計学は国状学と英国の経済学の統合へと進んでいく。