改良9Cr鋼周溶接部の内圧引張クリープ試験による損傷研究: 周溶接部の破壊形態に軸力が与える影響

摘要

改良9Cr鋼は，耐熱性に優れたフェライト系鋼として超々臨界圧火力発電プラントの配管に使用されている。近年，この材料の試験データが蓄積されるにつれ，長時間クリープ域における強度低下と溶接熱影響部（HAZ）の大幅な弱化が顕在化してきた。特にHAZの弱さに起因する実機プラントの不具合事例が多く発生しており，電力会社は改良9Cr鋼の欠点を考慮した上で配管部材の保守管理をする必要に迫られている。改良9Cr鋼溶接部の損傷メカニズムについては多くの研究により解明されつつあるガ，ューザーが欲する損傷評価手法に関してはいまだ信頼に足るものが得られていない。また，多くは長手溶接部に関する研究例であり，この場合は蒸気内圧による周方向応力が支配的となってHAZの細粒化した部分が破壊すると理解されている。一方，周溶接部の破壊に開する研究報告例は少なく，実機配管の周溶接部がどのように破壊するか明らかではない。2.25Cr-1Mo鋼等の低合金鋼では極端な溶接部弱化がないため，周溶接部の破壊形態は母材部同様に軸方向き裂による割れが予想される。しかし，HAZ強度が低い改良9Cr周溶接部では，周方向の1/2程度しか発生しない軸方向引張応力でも周方向き裂によりHAZが破断する可能性がある。実機配管においては，固定金具や自重の影響に起因するシステム応力によって蒸気内圧の他にも軸方向荷重がプラスされる箇所もあり，蒸気圧の高い主蒸気管では短時間に周方向き裂が進展，破壊することも懸念される。