電圧ひずみについて

摘要

近年，パワーエレクトロニクス技術の進歩により，さまざまな半導体応用機器が広く普及し，社会の利便性向上に大きく貢献している。一方，半導体を応用した機器の多くは，電力系統から供給される正弦波電圧の一部を，設備や負荷機器に都合のよいように変換して利用されるため，基本波（50 Hzまたは60 Hzの正弦波）の整数倍の周波数成分である高調波電流が発生する。このような機器から発生する高調波電流が電力系統の電圧ひずみを引き起こし，系統に接続している他の機器に対して，さまざまな障害（悪影響）を生じさせることがある。また，近年における夏季の高温化に伴う空調機需要の増加やLED機器などの負荷状況の変化も，高調波による障害の増加要因となってきている。各種規格•ガイドラインにより高調波抑制対策が行われているが，今後より一層の機器の高効率•省エネ化等により，インバータ機器の普及拡大（単純增）だけでなく，既設更新における非インバータ機器の新規インバータ化や，インバータ回路の高度化（設計変更•改良等）などにより，機器からの高調波電流の発生量は変化していくと考えられる。本稿では，高調波による電源への影響（電圧ひずみ）や高調波を発生する機器や回路構成，その対策方法や運用について説明する。