丹下健三による大東亜建設記念営造計画のランドスケープデザイン

摘要

最後に，これまで指摘されていない特徴をまとめる。まず神域構成については、北側全体が入れ子状の囲いにより森を背負う神聖な空間としての構成をみせ，徒歩を基本とするのに対して，神域の南側全体は国民広場の近くまで車の動線が展開する前庭的な構成で，2 つの台形広場だけでなく，神域全体が南北で対照的に扱われている。囲うことによる記念性は，神域全体を標す境界，樹林の中の垣，古墳や城を思わせる掘，石垣と柱廊と，4 重の境界に異なる造形言語が適用され具体化されていた。２つの台形広場が神域中央に高く掲げられ，神域全体を束ねるが，広場が柱廊により周囲に対してやや閉鎖的であるのに対して，両者をつなぐブリッジからは富士への眺めが遠く西へと開かれていた。また，国土計画的な全体像の中で，神域として選定された敷地が旧東海道本線のルートとしても意識され，富士東麓に荘厳な針葉樹林のイメージが重ねられている可能性を指摘できた。