米陸軍『歩兵戦闘車』開発の経緯とこれから(前編)

摘要

アメリカ陸軍のM1(Abrams：主力戦車）とともに戦場を駆け巡るM2(Bradley：歩兵戦闘車）は、1981年に部隊配備が開始されてから約40年が経過する装備である。M3騎兵戦闘車両をはじめ多くの派生型戦闘車雨も存在するが、M2に限った場合でも1994年までの生産数は約4,600両に上るとされる。これまで老朽化に伴い、さまざまな後継装備の検討がなされてきたが、2020年になって再び大きく注目を集めている。その理由は、2020年1月に決定された三度目となる後継装備取得プログラム中止の経緯と2月に明らかとなった実質四度目になる新たな取得プログラムの開始である。注目の背景には、米陸軍全体の高い優先事業に位置付けられている戦闘車両の近代化事業が三度目の中止に遭遇したことが挙げられる。それぞれの原因、背景は異なるが、米議会、産業界に存在する米陸軍の指導力への不信感再燃の兆しもある。さらに厳しい財政事情の下、重要な装備の位置づけにあるM2歩兵戦闘車の後継装備取得アプローチや先端的防衛技術、将来の製造規模に対する産業界からの熱い視線もある。