脂肪なら安心？

摘要

年に一度の健康診断で、脂肪肝を指摘されて外来にやってくる人はまれではない。臨床検査や超音波検査で発見されるのだが、何も症状がないため、放置している人も多いのではないだろうか。しかし、決して甘く見てはいけない。脂肪肝は肝臓に中性脂肪が貯まった結果起きるもので、運動不足で沢山の餌を与えたガチョウの肝臓のフォアグラに例えられることは有名である。ということは、人間でも連動不足で栄養過剰な状態、つまり生活習慣病でよく見られること、また中には進行性のものもあることがわかってきたことから、治療が重要である。単純性の脂肪肝は生活習慣病の症状の一つであるので、基本はアルコール制限、カロリー制限、運動療法でコントロールできる。しかし、脂肪肝の中に1割程度含まれるNASH（非アルコール性脂肪性肝炎）という肝炎は肝硬変にまで進行することが多く、早めの診断と治療が必要になる。最終的な診断は生検という細胞を取って見る検査によるが、ある程度採血で可能性を知ることができる。NASHの原因はまだ明らかではないが、肝臓へ沈着した脂肪や鉄の酸化、インスリン抵抗性（生活習慣病の原因でもある）などが考えられている。いずれにせよ、ただの脂肪だから大丈夫だと放置しないことが重要なのだ。