ジャッキアップ回転架設工法(宿茂高架橋)

摘要

山岳路線の橋梁建設においては，トンネルの存在など，前後の線形の制約から送出し架設のための施工ヤード確保が困難な場合がある.このような場合，ケーブルエレクション工法のような，大掛かりな設備や架設ヤード確保のための工事用道路の整備が必要となるなど，建設費が高くなることから，PC連続ラーメン橋が多く採用されてきた.このような状況の中，平成6年に設置された山岳橋梁架設技術検討グループ(当時，新日本製鐵㈱，日本鋼管㈱，川崎製鉄㈱，住友金属工業㈱，㈱神戸製鋼所，㈱巴コーポレーション)は，土木学会·鋼構造新技術小委員会，日本鋼構造協会·次世代土木鋼構造研究特別委員会のもとで，鋼橋による対応策に取組み，ジャッキアップ回転架設工法という斬新なアイデアを生んだ.アイデアの具現化には，数々の検討·実験を経ており，大阪大学の西村宣男教授(当時)，横浜国立大学の宮田利雄教授(当時)の指導により，座屈安定性，耐風安定性について解析と実験で本工法が成立することを確認した.一方で，ジャッキアップした桁を回転させるためのシステムを新たに開発し，回転実証試験で回転制御の安全性を確認した.これらの成果を基に，宿茂高架橋の施工方法等提案型指名競争入札に参加し，ヒヤリングをクリアして受注することができた.受注後は，大阪大学の西村宣男教授(当時)を委員長として，横浜国立大学の山田均教授，山岳橋梁架設技術検討グループ，オブザーバーとして，日本道路公団四国支社の望月秀次課長，広瀬隆弘工事長，井置聡工事長，築山有二技師(当時)らで，ジャッキアップ回転架設工法の実現に向け技術検討会を設置した.